土と肥料

堆肥の目的と使い方【堆肥の種類ごとに使い分ける!!】

「これを混ぜるとよく育つと言われたからとりあえず入れてます。」

「堆肥を入れると野菜がうまく育つんでしょう?」

 

家庭菜園で野菜を育てていて堆肥をなんとなく使っている人は多いのではないでしょうか?

でも、それでは正直、堆肥の持つパワーをうまく使いきれていません。

「なぜ堆肥を使うのか」「堆肥の種類ごとの使う量の目安」を正しく理解することで、堆肥の持つパワーを最大限発揮させたいですね。

この記事では堆肥を使う目的と使い方、さらに、堆肥の種類ごとの施用量の目安をまとめましたのでぜひ参考にしてくださいね。

堆肥の使用目的は大きく2つに分けられる

堆肥を施す

堆肥には様々な種類がありますが、使用目的によって大きく2つに分けることができます。

1つ目は、土壌改善を目的とするもの、2つ目は、作物に対する肥料効果を目的とするものです。

①土壌改良を目的として使う

ビニール袋で落ち葉堆肥

土の環境をよくしたい時は、腐葉土やバークなど、植物由来の材料を主とした植物質堆肥を使います。

これらの堆肥は、肥料成分はわずかしか含みませんが、微生物のエサとなる炭素分を多く含みます。

なので、固い土壌の団粒化を進め、水はけと水もちをよくして、通気性も保肥力も向上させ、土をフカフカにしてくれますよ。

②肥料効果を目的として使う

生ゴミ堆肥

植物の生育に必要な肥料効果を期待するには、牛ふん鶏ふんなどの家畜ふんや、台所から出る生ゴミ(食品廃棄物)を原料とした堆肥を使います。

土壌改良効果もありますが、主として肥料成分(チッ素、カリ、リン酸)の供給を目的とし、化学性の改良効果に優れています。

 

しかし、材料の種類によって肥料成分が違うので、注意して使わないと、土の中の肥料成分のバランスが崩れてしまい、かえって植物の生育に悪い環境を作ってしまうことにもなるので注意しましょう。

堆肥と肥料の関係

堆肥には肥料効果の高い種類もありますが、肥料を使わずに堆肥だけで植物に必要な養分を賄うことができるのかといえば、必ずしもそうとはいえません。

例えば、堆肥に含まれる肥料成分は微生物によって分解されないと植物は吸収できないため、効き目はとても緩やかです。

 

鶏ふん堆肥など比較的速く効く種類もあります。

しかし、基本的に元肥を堆肥だけに頼ってしまうと、植物の初期生育が不良になることがあります。

そのような時は、速効性のある肥料を併用する必要があります。

 

また、堆肥には、数多くの肥料成分が含まれていますが、過不足した成分を補ってバランスを整えるためにも、肥料を施す必要があります。

堆肥と肥料は相互に補い合う関係になるということを、しっかり認識しておきましょう。

堆肥の種類と使い方

施肥

堆肥は、主とする材料が植物質のものか、家畜ふんや生ゴミなど肥料成分の多いものかによって、使い方が2つに分かれます。

使い方に関する両者の大きな違いは、堆肥を使った後に肥料を補ってやるのか、反対に抑えるのか、また、堆肥と石灰を使う期間をどの程度空けるのか、などについてです。

それぞれの特徴を活かした使い方をおこなうのがとても大切です。

植物質を主材料にした堆肥の場合

バーク堆肥

落ち葉やバーク、剪定クズ、ワラ、もみ殻、オガクズなどを主材料にして、植物の繊維分を分解させて作った堆肥が、これに当てはまります。

分解を促進させるための米ぬか油かす、または鶏ふん牛ふんを加えたものもあります。

 

植物質を主材料にした堆肥には、チッ素分はほとんど含まれていません。

その代わりに土の団粒化を進めて、水はけや水もち、通気性の良い、フカフカな土を作る効果が高いことが特徴です。

 

また、施してからの分解スピードがゆっくりなので効果は長続きしますが、不足するチッ素分は必ず元肥として肥料で補う必要があります。

未熟な段階で使う場合においても、分解の過程で土壌中のチッ素を吸収してしまうので、チッ素肥料も多めに施しましょう。

 

チッ素分をほとんど含まない植物質の堆肥は、石灰資材と同時に使用しても、チッ素分アンモニアガスになって抜けることを心配する必要がありません。

 

ただし、植物質の堆肥に家畜ふんなどを混ぜて使う時は、石灰資材を同時に使用した後、すぐに種まきや苗を植えつけたりすると、アンモニアガスが発生して、作物が害を受けることがあります。

植物質堆肥の主な含有成分の割合の目安

種類チッ素リン酸カリ
腐葉土0.3〜1%0.1〜1%0.2〜1.5%
バーク堆肥1.5〜2%0.2〜2%0.3〜1%
落葉堆肥1.5〜2%0.1〜1%0.2〜2%
ワラ堆肥0.4〜2%0.1〜2%0.2〜3%
もみ殻堆肥0.2〜1%0.1〜1%0.2〜1%

肥料成分の多い堆肥の場合

牛フン堆肥

肥料成分の多い堆肥は、主に牛ふん、豚ぷん、鶏ふんなどの家畜ふんや、生ゴミを主材料にしています。

 

市販のものでは、家畜ふんにバーク、もみ殻、オガクズなどを加えて腐熟させたものが多いですが、家畜ふんだけでできているものもあります。

牛や鶏など家畜の種類によって、肥料成分の含有量は異なります。

基本的にチッ素やカリ分を多く含み、その代わりに植物繊維が少ないので、土壌改良効果(土づくり効果)はそれほど高くありません。

 

家畜ふん堆肥は、チッ素とカリを多く含むので、くれぐれも施しすぎには注意しましょう。

例えば、トマトなどの果菜類やサツマイモなどの根菜類では、茎や葉ばかりが茂り、花や実やイモがつかなくなります。

使用する堆肥に含まれている肥料成分と土の養分バランスを考慮して、施す量を調整するようにしましょう。

もし、肥料成分の多い堆肥を入れた場合は、元肥の窒素やカリを基準よりも抑えて施すようにしましょう。

夏場の高温期に大量に施す場合も注意が必要です。

なぜなら、肥料成分が多いために、急激に分解が進み、アンモニアガスや有機酸などが発生して、植物がガス障害や肥やけなどの害を受けることがあるからです。

また、家畜ふん堆肥や生ゴミ堆肥を、酸度調整のための石灰資材と同時に施すのは避けてください。

家畜ふん堆肥に含まれるチッ素分が石灰資材と反応してアンモニアガスとなって抜けてしまうからです。

せっかくのチッ素分が失われるだけでなく、アンモニアガスが作物を痛めることもあります。

家畜ふん堆肥や生ゴミ堆肥は、石灰資材をいれる1週間前くらいに施しましょう。

また、これらの堆肥を施したら、すぐに耕して土になじませてください。

肥料成分の多い堆肥の主な含有成分の割合の目安

種類チッ素リン酸カリ
牛ふん堆肥2〜2.5%1〜5%1〜2.5%
牛ふんバーク堆肥1〜2.5%0.5〜2%0.5〜1.5%
鶏ふん堆肥3〜5%5〜9%3〜4%
豚ぷん堆肥3〜4%5〜6%0.5〜2%
生ゴミ堆肥3.5〜3.7%1.4〜1.5%1〜1.1%

堆肥の施用量の目安

施肥2

いくら肥料分の多い堆肥でも、有機物が微生物によって分解されるという過程があります。

そのため、化学肥料よりも効き目がゆるやかで、作物に吸収される効率も化学肥料に比べると、それほど高くありません。

 

しかし、過度に施してしまうと生理障害を引き起こす心配があります。

そうならないためにも、堆肥の適正な施用量の目安を押さえておきましょう。

 

植物質の堆肥は1平方メートルあたり2〜5kg、家畜ふん堆肥や生ゴミ堆肥など肥料成分の多い堆肥は0.5〜1kgが一般的な量です。

なお、分解を促進させるための米ぬかや油かすなどを使わず、落葉だけで作られている腐葉土の場合は、いくら施しても土が養分過多になることはありません。

 

また、一口に家畜ふん堆肥と言っても、動物の種類によって成分量や効き方が違ってきます。

 

市販品として流通している牛ふん堆肥と鶏ふん堆肥を例とすると、牛は草食のため、ふんに繊維分が多量に含まれていますが、鶏は栄養価の高い穀物飼料を食べているので、鶏ふんは牛ふんより肥料成分を多く含むことになります。

あまり市場流通はしていませんが、豚分はその間と考えておけば良いでしょう。

 

肥料成分の多い鶏ふん堆肥なら1㎡あたり500g、肥料成分の少ない牛ふん堆肥なら1㎡あたり2kg前後が目安です。

このほか、土の性質によっても施す量を変える必要があります。

例えば、土が砂質なら、保肥力が小さく、過度に肥料成分を与えすぎてしまうと、植物は肥やけを起こす危険性があります。

砂質の土に肥料成分の多い堆肥を施す場合は、標準的な量の半分以下に控えてください。

以下に、堆肥の種類によっての施す際の目安をまとめています。(1㎡あたりの適正量です。また様々な堆肥+腐葉土・バーク堆肥の場合の割合は1:1)

種類一般の畑砂質の畑
鶏ふん堆肥0.5kg前後0.2〜0.3kg前後
鶏ふん+腐葉土・バーク堆肥0.5〜1.0kg0.3〜0.5kg
豚ぷん堆肥1.0kg前後0.5kg前後
豚ぷん+腐葉土・バーク堆肥1.0〜2.0kg0.5〜1.0kg
牛ふん堆肥2.0kg前後1.0kg前後
牛ふん堆肥+腐葉土・バーク堆肥2.0〜3.0kg1.0〜1.5kg
腐葉土・バーク堆肥2.0〜5.0kg2.0〜5.0kg

おわりに

上記で解説したように、堆肥は大きく2つに分けられます。

土壌改良をしたいのか、肥料として使いたいのか目的をしっかり見定めから、それに応じた堆肥を使いましょう。

また、それぞれの堆肥によって施す量も違うので、堆肥の与えすぎに注意しましょう。

下記に、土づくりの基本的な流れをまとめています。

施肥も含めて全体的な流れを知っておくと野菜づくりをスムーズにおこなうことができますよ。

ぜひ参考にしてください。