植物は土の中に自らが必要とする肥料成分(養分)がなければ育ちませんが、植物の生長に堆肥は必ず必要、というわけではありません。
しかし、堆肥をまったく施さないで栽培を続けていると、土はやせて硬くなり、しだいに植物にとって生育しにくい環境になってきます。
一方、毎年堆肥を施している畑では、生産が安定してきます。
そのため、慣例的に堆肥を施した方が良いとされてきました。
堆肥の具体的な効果には、①品質向上、②収穫量の増産、③生産の安定の3つが挙げられます。
この記事では、堆肥の3つの効果についてまとめました。ぜひ参考にしてください。
①品質の向上(物理性改善の効果)
植物は根から養分を吸収するため、根に共生される養分や水分が適切な量であれば、品質が向上すると考えられます。
つまり、養分(主に窒素)と水分の絶妙のコントロールによって品質を高めることができる、というわけです。
堆肥は、有機物が分解されることで、作物に適切な養分を与えるとともに、土を柔らかくフカフカの状態にし、水はけ、水もちを向上させます。
また、土が柔軟になれば、根が十分に伸びて、根圏土壌の養分や水分の保持力をさらに増やすことにもなり、作物の品質向上につながっていきます。
下記に「土の物理性の改善」についてさらに詳しく紹介していますのであわせてご覧ください。
②収穫量の増産(化学性改善の効果)
堆肥を施すことで、窒素、リン酸、カリウムのほか、植物が必要とする微量要素も土の中に供給する肥料効果があります。
そのため、植物はバランスよく養分を吸収し、収穫量が増えると考えられます。
また、窒素が多いと、タンパク質が合成される回路が働くため、植物の糖の成分が少なくなり、味や貯蔵性が低下します。
化成肥料では、急に窒素の効果が現れるために、糖が減少しやすい傾向にありますが、堆肥では、土の中の有機物が分解されることで、植物はゆっくり吸収し、食味が向上します。
下記に「土の化学性の改善」についてさらに詳しく紹介していますのであわせてご覧ください。
③生産の安定(生物改善性の効果)
堆肥を施すことで土の中の微生物は活発化し、生産が安定するようにもなります。
生産の安定を阻害する大きな要因の一つである連作障害の回避ができるからです。
連作障害は土壌中に残る有害微生物によるものが多いです。
そこで、堆肥を使い土の中の生物相を豊かにすることで微生物同士の拮抗関係が築かれ、有害微生物の増殖を防ぎ、生産が安定するようになります。
下記に「土の生物性の改善」についてさらに詳しく紹介していますのであわせてご覧ください。
おわりに
堆肥を土の中に施すことで、土壌微生物のエサが増え、活動が活発化されます。
すると、保肥力(肥もち)がよくなり、養分が吸収され、欠乏症が出にくくなります。【化学性の改善】
また、土の団粒化が進みます。【物理性の改善】
さらに微生物が増え、土壌病害を防ぎます。【生物性の改善】
これら3つの改善が行われることで結果として土が柔らかくなり、水はけ、通気性がよくなり、作物の品質向上や、作物がしっかり養分を吸収することで収穫の安定と増産に繋がります。
堆肥についてさらに詳しく理解したい方は下記をどうぞ。
良い堆肥の4つの条件と有機物を堆肥にする理由をまとめています。