自然農薬

【自然農薬】茎葉エキスとは?その作り方と使い方

植物を発酵させてつくる自然農薬のエキスは散布する作物の生育ステージによって大まかに「茎葉エキス」「花蕾エキス」「果実エキス」の3つに分けられます。

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この記事ではその中の「茎葉エキス」について素材一覧や、作り方、保存方法、使い方についまとめています。

1.茎葉エキスについて

トマトのわき芽

健全な生育を促す茎葉エキスは、葉菜や根菜は収穫間際まで1週間おきに、出蕾後は2週間おきに果実エキスと交互に散布するなど、まさに植物発酵エキスの中でも常備エキスです。

茎葉は全て使えますが、特に新芽やわき芽では盛んに細胞分裂が行われており、植物の生長に欠かせないビタミン、ミネラル、ホルモンなどが多く含まれているのでオススメです。

春はヨモギや菜の花の新芽、トマトやキュウリなどのわき芽を使います。

タケノコのように生長の早い植物は生長ホルモンの分泌が盛んです。

夏はクズのツル、トマトやキュウリのわき芽を使います。

秋はイチゴのランナーやイチジクの葉などを使います。

冬は作る作物も限られ、病害虫も少ないのであまり散布する必要もありませんが、ナバナやシュンギク、ブロッコリーなどの茎葉を使います。

ただしいずれも、葉面微生物によって発酵させるので、傷ついたものや病気にかかっているもの、農薬のかかったものは避けましょう。

また、こういった材料は栄養分の多い早朝に採取し、しおれて乾かないうちに仕込みます。

季節によっても異なりますが、仕込んでから約1週間で使えます。

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春に1kgの材料を採取して4ℓの容器に仕込むと、100㎡ほどの畑で、夏まで(3ヶ月間)週一回散布できる量の茎葉エキスができます。

茎葉エキスのオススメ植物素材一覧

イチゴのランナー
四季植物素材
カラシナ、ヨモギ、タケノコ、シュンギク、トマト、キュウリ、ミニトマト、カボチャ、ホウレンソウ、コマツナ、インゲン、タンポポ
クズ、トマト、キュウリ、イチゴランナー、イチジク、タケノコ、ゴーヤ、ヒマワリ、サツマイモ、クローバー
イチゴ、カボチャ、ミカン、イチジク、ホウレンソウ、コマツナ、シュンギク
ナバナ、ホウレンソウ、コマツナ

2.茎葉エキスの作り方

必要な材料と容器

必要なものは、「材料の茎葉」「砂糖」「容器」の3つです。

砂糖は材料の重さの約3分の1から2分の1の量を用意します。

ミネラルの豊富な黒砂糖が望ましいですが、白砂糖でも問題なく作れます。4ℓ容器で作る場合、材料を1kg、砂糖を300gが適当です。

容器はなんでも結構ですが、口がある程度広くないと作業がやりにくいです。

果実種を作る際に使う広口で透明なガラス容器は発酵の様子がよく見えてオススメです。取手がついていると移動にも便利です。

容器はあらかじめ熱湯消毒しておきましょう。

仕込み方の手順

①材料を刻む

表層についた微生物を活かすため、採取した茎葉は洗いません。

そのまま浸け込んでもできますが、4〜5cmに刻んだ方が汁液が出やすく、また発酵も早く進むので包丁やハサミなどでザクザク切りましょう。

②砂糖をまぶしながら混ぜる

黒砂糖をまぶす

準備した砂糖をまず半分に分けます。半分量の砂糖と刻んだ材料をよく混ぜ合わせます。

混ぜ方は自由ですが、ビニール袋に砂糖と材料を入れてボンボン振ると簡単に均一に混ぜることができるのでオススメです。

③材料をギュウギュウ押し詰める

ビニール袋で蓋をする

混ぜた材料を容器に中の空気を押し出すようにギュッギュッと押し詰めます。

漬物と同じように、隙間が多いと細胞液が出にくく、雑菌も繁殖しやすいからです。

4ℓ容器に1kgの材料なら容器の半分くらいの高さに平になるように押し詰めます。

④砂糖をかぶせる

詰めた材料の表面に残りの砂糖を敷き詰め、平らにならします。ちょうど砂糖でフタをしたようになります。

⑤容器のフタを緩めに閉める

容器のフタはやや緩めに閉めておくか、口を和紙で覆っておきます。

発酵が盛んになると葉面微生物が二酸化炭素を出し、ブクブクと泡が出てきます。

密閉してしまうと容器内の気圧が高くなり、容器のフタが飛んだり、破裂する危険性があります。

特に材料を多く入れた場合は注意し、発酵後にフタを開ける場合もゆっくり開けないと、エキスが飛び散ります。

⑥直接日の当たらない場所に置く

微生物は紫外線に弱いので、容器は直接日の当たらない場所に置きます。

ブクブクと発酵し、材料が浮いてきたら完成

発酵液を採取する

仕込んだ翌日には、もう汁液が出始めます。ブクブクと泡も浮かんできたら、微生物が砂糖をエサにして活動、増殖し始めた証です。

数日後には材料の高さ以上に茎葉エキスがたまってきて、ブクブクと盛んに泡が出てきます。

炭酸ジュースのような細かい泡がブクブクと盛んに上がってきて、材料が浮いてきたら発酵のピークです。このときが、もっとも葉面微生物が多くなってきます。

砂糖も分解されサラサラした液になってきて完成した状態です。茎葉エキスの散布適期もこの時です。

気温や材料によっても違いますが、春秋なら大体1週間、気温の高い夏なら3日前後で完成します。

水分が少ない硬いものは完成が遅くなります。

完成したら浮いてきた材料は取り除き、木綿のサラシやハンカチなどでこし、ペットボトルなどに入れます。

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材料をそのままにしておくと、雑菌が繁殖しカビが生えることがあります。

こんなときは失敗

仕込んで3日経っても汁液の出が悪く、材料が浮いてこなかったり、嫌な腐敗臭がしたら失敗です。

腐敗菌は繁殖しているので、作物の散布には向いていません。

失敗の主な原因は、以下の5点のいずれかです。

①押し込みが弱くすきまができていて、エキスが出にくくなっていた。

②砂糖がまんべんに充分に混ざっていなかった。

③上面に被せた砂糖が少なかった。

④材料が腐敗していた。

⑤材料に葉面微生物がいなかった。

また、腐敗臭はなくても、できあがりのエキスがネットリしているような場合も失敗で、散布に向きません。

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材料(マメ科植物)や季節によってまれにこのようなことがありますが、失敗したエキスを無駄にせず、堆肥と混ぜるなどして土に還しましょう。

汁液が出にくい材料はアルコール抽出をする

焼酎を注ぐ

体内に水分の少ないイネ科の植物などは、砂糖抽出ではうまく汁液が出てきません。

また粘性の高い植物や乾燥させてある素材も砂糖抽出には向きません。

これらは焼酎を使ってエキスを抽出します。

材料を刻んで、容器に詰め、ヒタヒタになるまで焼酎(35度)を入れます。

1ヶ月ほど置いて色が茶褐色に変わってくれば完成です。

焼酎などを使ってアルコール抽出した場合は、砂糖を使った場合と違い、葉面微生物は死滅してしまうので微生物の働きは期待できません。

材料の持つ栄養や生長ホルモンのみの効果になります。

ただ、いつまでも常温で保存できるというメリットもあり、使い方は発酵抽出エキスと同様です。

3.茎葉エキスの保存方法

雑草発酵液

発酵を持続させたいときは砂糖を追加する

植物発酵エキスは発酵のピークが一番効果の高いときになります。

慣れてくれば、散布時期に合わせて発酵のピークがくるように作ることもできますが、発酵を長引かせる方法があります。

材料が浮いてきてブクブクの勢いが弱くなったら、最初に入れた砂糖と同量くらいの砂糖を新たに加えると、発酵をさらに持続させることができます。

数ヶ月使う場合は冷蔵庫で保存する

1kgの材料を仕込むと500ccくらいの茎葉エキスができます。

100㎡の畑に散布する1回の茎葉エキスの量は、40cc(1000倍に希釈して40ℓ)くらいなので、12回ほど散布することができます。

ペットボトルに入れた茎葉エキスを、そのまま常温に置いておくと、せっかく繁殖した微生物がエサ不足などで死滅してしまいます。

そこで5℃前後の冷蔵庫に入れて保存すると、微生物の活動は非常に緩やかになり、発酵速度もゆっくりになり、長く使用することができます。

もっと長期に使いたいときは、冷凍庫に入れて凍結させます。凍結させても微生物は休眠するだけで生きているので問題ありません。

冷蔵庫に入れた茎葉エキスを使用するときは、時期にもよりますが使う日の前日に冷蔵庫から出して常温に戻し、再度ブクブクが発生し発酵していることを確認してから散布します。

20℃以上の時なら一日おけば散布することができます。

このように冷蔵庫に入れておけばいつでも使用することができます。

4.茎葉エキスの使い方

本葉が出たら週一回定期散布

茎葉エキスは、発芽し本葉が出てきたら週に一度、1000倍に薄めて、噴霧器で茎葉全体に定期散布します。

果菜類の出蕾後は茎葉エキスー果実エキスー果実エキスー茎葉エキスのローテーションで散布すると良いです。

ジョウロでも構いませんが、霧吹きや噴霧器で霧状に散布すると作物全体にエキスがよくかかります。

葉の裏までかかるようにしましょう。

葉の両側にエキスがかかって、水滴が落ちるようになれば充分です。

散布は朝か夕方にするようにしましょう。特に夏場は日中の散布を避けるようにしましょう。

散布した後に強い日光を浴びると葉が焼けてしまう危険性があります。

また、春先や秋口などに夕方散布する場合は作物が過湿になるのを防ぐため、夜を迎える前に水滴が乾くようにしましょう。

混用散布のパターン

茎はエキスは単体で使う場合と、他の資材と混ぜて使用する場合とがあります。

例えば作物に元気がない、病気が出てしまいそうだと感じたときは、代謝を促進する玄米酢を茎葉エキスと同量混ぜて使います。

1ℓの散布液を作る場合、水1ℓに対して、茎葉エキス1cc(1ml)、玄米酢1ccを加えて作ります。

また、低温時には、体内代謝を高める焼酎(35度)を加えます。

焼酎は500〜1000倍で使うので、水1ℓに対して茎葉エキス1ccと焼酎1〜2ccを加えて散布します。

おわりに

今回は「茎葉エキス」について詳しく解説しました。

植物発酵エキスは育てている作物の生育ステージに合わせて「茎葉エキス」「花蕾エキス」「果実エキス」に分けられます。下記に今回解説した茎葉エキス以外の2つのエキスについてまとめた記事がありますので、気になる方は合わせてこちらもどうぞ。