自然農薬

【自然農薬】果実エキスとは?その作り方と使い方

植物を発酵させてつくる自然農薬のエキスは、散布する作物の生育ステージによって大まかに「茎葉エキス」「花蕾エキス」「果実エキス」の3つに分けられます。

りぐ

この記事ではその中の「果実エキス」について素材一覧や、作り方、保存方法、使い方についてまとめています。

果実エキスとは?

トマトの収穫

果実エキスは、果実を細かく切って砂糖と混ぜて発酵させて作ります。

市販の果実ジュースからもできますが、その場合、砂糖は必要なく、イースト菌(酵母菌)を加えて発酵させます。

りぐ

果実には果実の着果、充実・肥大を促す植物ホルモンをはじめ、ビタミン、ミネラルが非常に含まれています。

さらに果糖やブドウ糖、ショ糖が多く、果実の表皮には様々な微生物が付着しています。

果菜類は出蕾後は、体を育てる栄養生長と花蕾や果実を発育・肥大させる生殖生長とを同時に行わなければならないため、根や葉の負担が急増します。

りぐ

力がないと疲れ果てて弱り、そこに病原菌や害虫が襲うことになります。

そこで、吸収しやすいエネルギー源である糖たっぷりの果実エキスを、この出蕾後に定期的に散布すると、根や葉の負担が軽くなるとともに、果実の発育肥大が促され、糖度の高い美味しい果実になります。

さらに、果実エキスは、葉菜と根菜にも本葉六葉期の生育交代期と収穫前に、茎葉エキスに混合して散布すると大変効果があります。

りぐ

収穫前に散布すると、そのまま茎葉や根部に運ばれ、糖度の高い美味しい葉菜、根菜になります。

果実エキスの材料は何が必要?

イチゴの品種

摘果した未熟果でも良い

果実エキスにはあらゆる植物の果実が材料になります。

果実は未熟なものから成熟したものまで使うことができ、栽培途中で摘果したものも使えます。

実りの秋というように、材料は秋に多く採れますが、春もイチゴなど摘果したものなどを利用してエキスを作ることができます。

りぐ

夏はブドウや成熟したトマト、秋にはリンゴやイチジクなど季節に合わせて作りましょう。

市販のパイナップルや果実ジュース、スギ・マツの実を使う

日本には夏から秋にかけて実をつける植物が多く、素材もその時期に多くあります。

市販の果物でも構いません。オススメ素材はパイナップルキウイなどで、良質の果実エキスを作ることができます。

そのほか、野山にも実をつける植物は多くあります。5〜6月のスギやマツなどの実でも良い果実エキスができます。

実りの時期になったら野山を歩いて材料を探してみてください。他のエキスと同様、病気の果実や傷果は使用しません。

りぐ

また、手っ取り早く作る場合は、市販のパイナップルやトマト、ブドウなどの果実ジュースに、イースト菌を混ぜて発酵させた果実エキスもオススメです。

果実エキスのオススメ植物素材一覧

 果実エキスのオススメ植物素材一覧
メロン(ハウス・摘果)、トマト(摘果)、イチゴ、パイナップル(購入)
トマト、ブドウ、パイナップル(購入)、モモ、スギの実、マツの実、イチジク
キウイ、リンゴ、イチジク、ブドウ、パイナップル(購入)、イチゴ、カキ、ヤマブドウ
イチゴ、キウイ、パイナップル(購入)

果実エキスの作り方

果実エキスの作り方は、茎葉エキスの作り方と同様ですが、砂糖を材料重の二分の一と多めに加えます。

りぐ

果実は水分が多く、砂糖を好む酵母菌が多いからです。

材料にもよりますが、4ℓ容器で作る場合、果実材料1kg、砂糖500gが適量で、容器はあらかじめ熱湯消毒しておきましょう。

①果実を細かく切って砂糖をよくまぶす

果実の皮の表面に付いている酵母菌などの微生物が発酵の主役です。

材料は洗わず、皮をむかず、そのまま包丁で細かく刻みます。

細かく切って表面積を多くすることが抽出するコツです。

切った果実はボールなどにいったん入れておきます。

準備した砂糖をまず半分に分け、半分の量を果実にかけて、材料と砂糖がよくなじむように揉み込みながら混ぜます。

②容器にギュウギュウ詰めて砂糖でフタ

砂糖を混ぜた材料を容器に入れ、中の空気を押し出すようにギュギュっと押し詰めます。

隙間があると雑菌が繁殖して腐敗しやすくなります。

ギュウギュウに詰めた材料が、容器の3分の2以下になるように、上部をあけておきます。多いと発酵途中で溢れてしまいます。

 

次に詰めた材料の上に残りの砂糖を敷き詰めます。

ちょうど砂糖でフタをしたようになります。

砂糖を平らにならしたら容器のフタを閉めて、直接日の当たらない場所におきます。

材料にもよりますが、果実エキスは糖分が多く発酵が盛んです。

フタを密閉すると発生した炭酸ガスで気圧が高くなり、容器のフタが飛んだり、破裂したりする危険性があるので、容器のフタはせず、少し緩めておきましょう。

フタをせず、口を和紙で覆っても良いです。

③すぐに抽出、発酵し始め1、2週間で完成

果実は茎葉と比べて水分が多く、材料にもよりますが、翌日にはエキスが上面近くまで上がってきます。

また糖分も多いので、翌日にはブクブクと泡が立ってきます。

泡が盛んに立ってくると、材料も浮き上がってきて、容器いっぱいになってきます。

このような状態になったら散布できます。春・秋なら2週間、夏は1週間くらいが完成までの目安です。

りぐ

散布する前に浮いた材料は取り除き、木綿のサラシやハンカチなどでこしてペットボトルなどに入れておきましょう。

果実エキスは長期保存も可能

発酵最盛期に使用することが理想ですが、茎葉エキスと同様に冷蔵保存したり、砂糖を加えて発酵を持続させたりすれば、長期間使用できます。

果実エキスは、糖分が多いので、茎葉エキスよりも失敗は少なく、保存中に腐敗する心配もありません。

散布する1日前に外に出して再発酵させ、使う前にフタをあけた時に、ビールのように泡が出てきたら微生物効果が期待できます。

また、果実エキスは微生物効果もありますが、エネルギー源となる吸収しやすいブドウ糖、果糖などが多いので、発酵は終わった長期保存したものでも効果があります。

りぐ

このような果実エキスは茎葉エキスに混合して散布すれば、微生物効果が高まります。

果実ジュースで作る簡単果実エキス

果実液は市販の果実100%ジュースでも簡単にできます。

ただし、ジュースは高温殺菌されているので、市販のドライイーストを加えて発酵させます。

酵母菌による発酵なので、アルコール発酵します。

材料は果汁100%のジュース1ℓ、2ℓの空きペットボトル、ドライイーストをティースプーンで1杯です。

作り方は簡単で、空きペットボトルにジュースを入れて(上部半分は空くように)、ドライイーストを加えて終わりです。

フタをきっちり閉めたままにしているとペットボトルが破裂してしまうので、緩く閉めておき、時々緩めてガス抜きをしてください。

1〜2日後には発酵が盛んになり、使用できます。果実から作ったものほど期待ができませんが、栄養源効果は十分にあります。

果実エキスの使い方

自然農薬を吹きかける

果菜、葉菜、根菜で使い分ける

果実エキスは、作物に勢いをつけたり、果実の着果、充実肥大がねらいで散布します。

作物が栄養生長から生殖生長に移る生育交代期(本葉六葉期)以降に散布します。

このタイミングを見定めて散布することが大事です。

葉菜類や根菜類には、本葉が6枚出たときと収穫の前日に、計2回散布します。

収穫数日前に散布すると葉や根部に糖度ものり、日持ちが良くなります。

果菜類は生育交代期以降も栄養生長と生殖生長を繰り返すので、茎葉エキスと交互に散布することになります。

果菜類には六葉が出たら花蕾エキスと混ぜて散布し、その後、1週間おきに果実エキスを散布したら次に茎葉エキスを1回、また果実エキスを二回散布したら茎葉エキスを1回、というローテーションを繰り返していきます。

果菜類の中でもキュウリなどのウリ科類は、1週間おきに茎葉エキスと果実エキスを交互に散布しましょう。

りぐ

また、果菜類へ散布する果実エキスに茎葉エキスを混ぜても構いません。

葉面微生物と果実面微生物の混用散布となり、微生物パワーがアップします。

1000倍に薄めて混用散布

果実エキスを単用する場合も、花蕾エキスや茎葉エキスと混用散布の場合も、基本は1000倍に薄めて散布します。

水1ℓに対して、果実エキスも花蕾エキスも茎葉エキスも1ccです。

花蕾エキスと同じく、500倍以上に濃いと生育が停滞することがあります。

霧吹きや噴霧器を使って作物全体に吹きかけましょう。

おわりに

この記事では、「果実エキス」についてまとめました。

植物発酵エキスは育てている作物の生育ステージに合わせて「茎葉エキス」「花蕾エキス」「果実エキス」に分けられます。

りぐ

下記に今回解説した茎葉エキス以外の2つのエキスについてまとめた記事がありますので、気になる方は合わせてこちらもどうぞ。