堆肥づくりには有機物に含まれる「土壌微生物」の働きが欠かせません。
そこでこの記事では、「土壌微生物」についてまとめました。
それぞれの微生物の特性や好む温度などを理解して堆肥づくりに役立ててください。
糸状菌
糸状菌はコウジカビなどカビの仲間です。
土壌微生物の中で最も多いといわれています。
分子の大きな炭水化物を小さな炭水化物や糖に分解する機能があります。
糸状菌の仲間は15〜40℃という低めの温度を好むので、堆肥の原料を積んだ後他の微生物より早く活躍し始めます。
しかし、温度がしだいに上昇して50℃以上になると、糸状菌の数は減ってきます。
植物病原菌に糸状菌が多いのは、糸状菌が植物の繊維を分解する力を持っていることと、作物の生育適温と好みの温度帯が重なるからです。
微生物がタンパク質を分解してアミノ酸を作るとき、まず、糸状菌がデンプンを分解して糖を作り、その糖をエネルギーとして酵母や放射菌などが増殖し、彼らがタンパク質をアミノ酸に分解します。
糸状菌によるデンプンの分解が進まないと、糖ができないために、アミノ酸を作るのも効率が悪いということになります。
つまり、糸状菌は次に続く微生物の働きのために準備を整える役割を担っているのです。
酵母
酵母には、タンパク質を分解してアミノ酸やサイトカイニン様物質を作ったり、糖を分解してアルコールに換えたりする機能があります。
酵母が好むのも15〜40℃という低めの温度なので、堆肥の山の裾部分や、外気と触れる表面部分などで主に増殖します。
酵母には空気の少ないところでも活動できる(通性嫌気性菌)という特徴があります。
このため分解速度は遅いのですが、エネルギーロスも少ないので、効率よくアミノ酸を作ることができます。
納豆菌
納豆菌はダイズ中のタンパク質を分解して旨味成分であるアミノ酸を作り、ネバネバ物質を作ることでよく知られています。
このネバネバ物質は土の団粒化の形成にも役立っています。
納豆菌の仲間は種類も多く、様々な酵素を持っており、例えばセルロースやタンパク質、油脂などを分解するものもいます。
これはとても重要なことです。
というのも、畑に次の作物を栽培するにあたって、前作に作ったものの残渣をそのままにしておくと有害微生物のエサになりかねません。
この未熟有機物を納豆菌が持つセルロース分解酵素が先取りすることで、有害微生物の繁殖を抑えることができるのです。
納豆は好気性の微生物で、30〜65℃の温度を好みます。
発酵は早いのですが、その分エネルギーも使うので、有機物中の窒素分や炭水化物の減り方が大きくなります。
また、有機物の窒素分がアンモニアガスとなるので、悪臭が発生しやすいとう特徴があります。
放線菌
放線菌は好気性の微生物で、湿気があって空気の通りが良いところ、例えば、腐葉土の下などに棲みついています。
堆肥の表面から5〜10cmくらいのところに白い糸状または粉状に見えるのが放線菌です。
放線菌の大きな特徴は、土壌病害虫を抑える力を持っていることです。
土壌病害虫のセンチュウ、甲虫類の表皮、フザリウム菌といったカビの仲間の細胞膜はキチン質でできています。
放線菌はこのキチン質をキチナーゼという酵素で分解して栄養源としているので、放線菌が増殖することで病害虫の発生を抑えることができるのです。
乳酸菌
乳酸菌は嫌気性で乳酸を作る微生物です。
乳酸は有機酸の一種で殺菌作用を持っています。
そして有機酸はキレートを作るので土壌中のミネラルを可溶化して、作物に吸収しやすい形にする機能も持っています。
おわりに
この記事では、土壌微生物について紹介しました。
それぞれの微生物の特性を活かして堆肥作りに役立てていきましょう。
下記に落ち葉堆肥の作り方についてまとめていますので、あわせてご覧ください。