土と肥料

【土と肥料の関係】肥料について基礎から学ぶ!

植物を元気に育てるために欠かせないのが肥料です。

肥料は原料の違いによって、無機質肥料(化学肥料)有機質肥料に分けることができます。

それ以外にも、含まれる成分の数、形状、効き方などによって様々な種類に分類されます。

それぞれに特徴があるので、肥料を用途によって使い分けることが大切です。

この記事では、肥料の基本についてまとめています。しっかり学んでいきましょう。

なぜ肥料が必要なのか

土と野菜

自然界の循環では、野生動物のふん尿や枯死した植物は土にもどり、有機物となって土を豊かにしてきました。

人は長年かかって作り上げた大地を畑に変えて、食物となる作物を栽培しています。

土の栄養分を吸収して育った野菜を収穫するということは、畑の外に栄養分を持ち出すということです。

ということは、つまり、人が循環を途切れさせてしまっているのです。

 

そのため、畑に堆肥などの有機物を還元し、肥料を補給して豊かな土を戻すように働きかけないと、土は痩せてしまうのです。

くわえて現在の作物の多くは、自然のものに比べて、肥料をより好むように改良されていますから、畑は堆肥だけでなく、作物が土から吸収した肥料成分を補っていかなければ作物が育たないのです。

施肥とは?元肥とは?追肥とは?

施肥

土づくりの目的は、作物が育ちやすい土壌環境にすることです。

 

堆肥や腐葉土、石灰などの土壌改良材を施して、植物が栄養を吸収しやすい状態のフカフカの土を作ることが基本です。

堆肥や腐葉土は、土の状態を改善することが主な役割です。

しかし、土の状態が良いだけでは、作物は思うように生長しません。

野菜においても花においても、それぞれ必要とする養分、すなわち肥料を与える必要があります。これを「施肥(せひ)」といいます。

 

作物が成長するためには、チッ素、リン酸、カリの三要素とその他の様々な微量要素を必要とします。種まきや苗の植えつけ前に施す肥料を「元肥」といい、生育途中で促す肥料を「追肥」といいます。

あぐり

よく堆肥と肥料を同じものと考えがちですが、堆肥は土づくり、肥料は野菜づくり・花づくりのためだと考えると良いですね。

養分は過不足のないようにする

尻腐れトマト
尻腐れが起こっているトマト。カルシウム不足が原因。

不足する養分を補う

下記に植物と土の必須要素の比率を表にしました。

右端の数値は植物が必要とする量を、土の中の含有量で割った値です。

つまり、値が1以上であれば、植物が必要とする量が土の中の含有量より多いので、不足分を肥料として施す必要があります。

なお、微量要素などにも1を超えるものがありますが、少量なので、堆肥などで補えば十分です。

元素(要素)植物(mg/kg)土(mg/kg)植物/土
チッ素(N)30000100030
リン(P)23006503.5
カリ(K)14000140001
カルシウム(Ca)18000137001.3
マグネシウム(Mg)320050000.6
イオウ34007004.9
鉄(Fe)14038000000.4
マンガン(Mg)6308500.74
銅(Cu)14200.7
亜鉛(Zn)160503.2
ホウ素(B)50105
モリブデン(Mo)120.5
塩素(Cl)200010020
ニッケル(Ni)1200.05

養分が不足すると様々な症状が出る

必要とする量が多かろうと少なかろうと、必須要素が足らなかったり、あるいは過剰だったりすれば、作物も体調を崩してしまいます。

土を見ただけではわかりませんので、まずは、作物の観察を通じて判断していきます。

それぞれの肥料が、不足した場合に起こる症状変化の主な例を下記に表にしてまとめました。

チッ素欠乏 全体的に生育が悪くなる。葉全体が黄色くなり、古い葉は落葉する。
リン酸欠乏葉が濃緑色になり、葉柄が赤みもしくは紫色を帯びる。全体的にツヤがなくなったり、下葉は赤みがかり枯死・落葉する。
カリ欠乏生育耕起に下葉の周辺や先端が黄色または褐色に変化し、枯死・落葉する。
カルシウム欠乏葉や根の先端の生長が止まり、葉の周辺が枯死する。トマトの尻腐れ、キャベツ、ハクサイ、タマネギなどの縁腐れや芯腐れ、キュウリ、メロンなどの芯止まりはカルシウム欠乏が原因。
マグネシウム欠乏生育が進むと、下葉の葉脈の間が数株玉状に黄変し、ひどくなると落葉する。ダイコン、トマト、ナス、ダイズなどによく表れる。
ホウ素欠乏根の先端の生長が止まり、中心が黒変し、葉や葉柄がもろくなる。ダイコン、カブは中心が黒く腐る。ハクサイ、セロリの心腐れもホウ素欠乏が原因。
マンガン欠乏新葉の葉脈の間が黄変して、葉脈に沿って縁が残るというのが特徴。この現象は古葉には表れない。
鉄欠乏新葉の葉脈の間が黄変して、徐々に葉全体が黄色になる。この現象は古葉には表れない。

微量要素の欠乏は、土のpHの変化によっても誘発されます。

例えば、ホウ素は酸性土壌においては水に溶けやすく、アルカリ性土壌では溶けにくくなります。

酸性下では雨水により流出し、アルカリ性下では水に溶ける量が少ないので、共に欠乏症が発生しやくすくなります。

養分が過剰でも障害が起こる

つるぼけサツマイモ
つるばかりが茂る「つるぼけ」が起こったサツマイモ

植物が必要とする以上の養分が土壌中にあると、色々障害が起きてしまいます。

例えばチッ素をやりすぎると、葉全体が青緑色になり、茎や葉は軟弱になってしまい、病気にかかりやすいひ弱な作物になります。

カリの過剰は、マグネシウムの吸収を阻害し、欠乏症を生じさせます。

リン酸はカリとチッ素を比べると必要量は少ないですが、肥料としての重要度は高いです。

リン酸は土の中のアルミニウムや鉄と結びついて、植物が吸収しにくくなるため、必要以上に施しがちです。

長期間、多量に施し続けると土の中に貯まって深刻なリン酸過剰症や土壌病害の発生要因となってしまいます。

養分のバランスが大切

家庭園芸では、資源コストを考えずに必要以上に肥料を与えすぎてしまいます。

健康の基本が腹八分であるように、肥料は控えめにバランスよく与えるのが良いです。

 

通常、野菜畑のカルシウム、マグネシウム、カリの比が6:4:3に近いとき、養分吸収のバランスが良好に保たれると言われています。

要は、一方が多すぎると他方の吸収を阻害するので、絶対量の問題だけでなく、施肥のバランスが大切ということになります。

おわりに

この記事では、肥料と土の関係についてまとめました。

また、肥料は、色々な分類の仕方があります。

下記に肥料の形状や効き方による分類をまとめましたので、気になる方はこちらも参考にしてください。