土壌環境によって堆肥の分解のスピードは変わります。
例えば、ペットボトルなどで生ゴミ堆肥を作るにしても、夏に作るのと冬に作るのとでは、分解されるスピードは変わります。
この記事では、土壌環境によって異なる堆肥の分解についてまとめています。
実際に、ペットボトル堆肥などを作る場合は下記の記事を参考にしてください。
夏と冬では大きく異なる
堆肥の分解は温度によって左右されます。
なぜなら、分解の働きには微生物が関係しているからです。
微生物の種類によっては活動の最適温度は違いますが、一般に土壌微生物の活性が最大になるのは、30〜60℃です。
このため、夏よりも冬の方が堆肥の分解がゆっくりになり、チッ素の発生量も抑えられます。
では、夏と冬でどれだけチッ素成分の発生に違いが出てくるのでしょうか。
半年間に発生する作物に吸収可能なチッ素(無機態チッ素)を、夏作時期(4月から9月)と冬作時期(10月から3月)に分けて比較してみると、夏作では堆肥に含まれるチッ素分の23%が分解するのに対し、冬作では14%しか分解されません。
冬に堆肥を施す際は、堆肥に含まれるチッ素分の効き目を夏の時よりも低く評価し、元肥や追肥などで不足するチッ素分を補ってやる必要があります。
ただし、夏の温度が高い時期でも乾燥が続いて水分が少なくなれば微生物の活動は弱まり、堆肥の分解が進まなくなるということもおさえておきましょう。
水分量や土のpHでも異なる
堆肥の中の微生物の活動は、温度だけでなく、土に含まれる水分量やpH、土の性質などによって左右され、それらの条件によっても堆肥に対する分解力は違ってきます。
土の水分は、最大容水量(最も水を吸収できる量)の50〜60%が適しています。
微生物の種類によっても水分量の好みは異なり、糸状菌や放線菌はやや乾燥を好みますが、極端な乾燥状態では活動しません。
最近では、やや水分が多い方が良いとはいわれてはいますが、加湿になりすぎると嫌気性菌が活動し始めますから堆肥の分解が進まなくなります。
一般に、土のpHは中性が最も微生物の活動にて適しているといわれており、堆肥の分解も盛んです。
極度な酸性やアルカリ性では、微生物の多くは活動が低下しています。
微生物の種類によっても、適したpHは異なるので一概にはいえませんが、細菌(バクテリア)や放線菌には中性が、糸状菌にはやや酸性が適しています。
微生物の活動しやすい環境と条件
原料 | 温度 | 水分 | 酸素 |
糸状菌 | 15〜40℃ | 20〜80% | 好き |
酵母 | 15〜40℃ | 多めを好む | 幅広く対応 |
納豆菌 | 30〜65℃ | 20〜80 % | 大好き |
放線菌 | 30〜65℃ | 20〜80% | 大好き |
乳酸菌 | 15〜40℃ | ないとダメ | 嫌い |
※納豆菌とは、枯草菌などのバチルス菌をさす。
※納豆菌、放線菌の中には80℃くらいで増殖するものもある。
おわりに
今回は、土壌環境で異なる堆肥の分解についてまとめました。
温度や水分、土のpHによって分解の仕方が異なるので、上記でまとめたことをしっかり理解していると、落ち葉堆肥や生ゴミ堆肥を作る際に、ロジックをしっかり理解しているので、温度や水分量の調整をうまくできるようになりますよ。
ちなみに、この記事では、糸状菌や放線菌などがでてきましたが、他にもたくさんの有用微生物があります。
下記に一覧にしてはたらきなどをまとめていますので、気になる方はこちらを参考にしてください。