土と肥料

植物が必要とする栄養素の種類は?

野菜を育てていると「チッ素、リン酸、カリウムが大切」とよく聞くと思いますが、なぜ大切と言われるかはご存知でしょうか?

また、野菜や草花を育てる上でこの3つの栄養分があれば良いというわけでは決してありません。様々な栄養分が相互に作用しあって野菜や草花は育っています。

この記事では植物に不可欠に必要な必須要素を表にしてまとめました。また植物に必須とされる三大栄養素(チッ素、リン酸、カリウム)についてまとめましたので参考にしていただければと思います。

植物が必要とするのは17種類の栄養素

マグネシウム

現在、地球上には118種類の元素が見つかっていますが、その中には、人工的に作られたものも含まれるので、自然界だけで見ると90種類くらいです。

その中で植物の生育に必要と言われるのは、現時点では少なくとも17種類の元素で、それらを植物の必須元素または必須要素といいます。

必須要素のうち、水素、酸素、炭素は、葉や根を通じて吸収するので、通常は肥料として施しません。

そのほかの14種類は、根から養分として取り込まれますが、これらは畑では人が補給しないと不足するので、肥料として施す必要があります。

これらの元素は作物が吸収する必要量の大小によって、多量要素微量要素に分けられます。

多量要素は、10あたりに5kg以上吸収されるものです。分類されるのは、チッ素、リン、カリの他にカルシウム、マグネシウム、イオウです。

微量要素は、10あたりに100g以下しか吸収されないものです。塩素、鉄、マンガン、ホウ素、亜鉛、銅、モリブデン、ニッケルがあたります。

以下に作物の必須要素とその働きを表にまとめました。

作物の必須要素とその働き

 
元素名   (元素記号)

種別
  
主な働き
水素(H)水と空気水としてあらゆる整理作用に関与。炭水化物、脂肪、タンパク質など植物の体を作る主要元素。
酸素(O)水と空気呼吸に不可欠。炭水化物、脂肪、タンパク質など植物の体を作る主要元素。
炭素(C)水と空気光合成に不可欠。炭水化物、脂肪、タンパク質などの植物の体を作る主要元素。
チッ素(N)多量要素葉や茎の生育を促して植物体を大きくする。「葉肥」とも呼ばれる。
リン(P)多量要素「花肥」・「実肥」とも呼ばれる。花つき、実つきをよくし、その品質を高める。
カリウム(K)多量要素茎や根を丈夫にし、暑さや寒さへの耐性、病虫害への抵抗性を高める。「根肥」とも呼ばれる。
カルシウム(Ca)多量要素細胞組織を強化し、体全体を丈夫にする。
マグネシウム(Mg)多量要素リン酸の吸収を助け、体内の酵素を活性化させる。葉緑素の成分で、苦土(くど)とも呼ばれる。
イオウ(S)多量要素根の発達を助ける。タンパク質の合成に関わる。
塩素(Cl)微量要素光合成に働く酵素に関与する元素
ホウ素(B)微量要素根や新芽の生長と花をつけるのに必要な元素
鉄(Fe)微量要素光合成に必要な元素
マンガン(Mn)微量要素光合成やビタミン合成に必要な元素
亜鉛(Zn)微量要素植物の生長する速さに関係する元素
銅(Cu)微量要素花や実のつく成熟した株になるための元素
モリブデン(Mo)微量要素硝酸還元を行う酵素の成分
ニッケル(Ni)微量要素尿素をアンモニアにする酵素に含まれる元素

肥料の三要素

肥料として施す必要のある必須要素の中でも、特に作物が必要とするのが、チッ素(N)、リン(P)、カリウム(K)です。これを「肥料の三要素」といい、土の中や肥料では、リンはリン酸、カリウムは通常カリと呼ばれています。

チッ素はアンモニア態チッ素と硝酸態チッ素の2つの状態で存在しています。

チッ素は全ての作物の茎や葉の生育に欠かせない成分で「葉肥」と呼ばれ、とても重要です。

市販の配合肥料においてもチッ素の含有量が基準となっています。

リン酸は主に花や実のつきをよくする働きがあり「花肥・実肥」と呼ばれています。特に夏野菜のトマト、ナス、キュウリなどの実どまりをよくするためには欠かせない要素です。

カリはすべての作物の根の生育に欠かせない成分で「根肥」と呼ばれます。作物が倒れたりしないよう丈夫に育てるために必要な要素です。

三要素の次に必要とされる要素は、カルシウムとマグネシウム、イオウです。これを「二次要素」あるいは「中量要素」といい、三要素と合わせて多量要素に分類されます。

これ以外の元素は微量要素で、土の中にある程度含まれており、かつ、土壌改良のために施す堆肥などからも供給されるので、普通は肥料として施す必要はありません。

おわりに

この記事では、作物の必須要素と働きを表にまとめ、また、チッ素、リン酸、カリウムの三要素について解説しました。特にこの三要素の働きをしっかり頭に入れておくと、作物を育てる際に生育不良が起こったときに何が原因か推測できることができますよ。