堆肥は環境ごとに施し方を変えることで、その効果をさらに高めることができます。
この記事では、作物、土壌のタイプ別ごとでの堆肥のやり方の違いについてまとめました。
栽培場所によっての堆肥のやり方のちがいについては下記を参考にしてください。
堆肥のやり方の違い【作物のタイプ別】
作物の吸収特性に合わせて施す
堆肥を施す際には、肥料と堆肥を別々に考えるのではなく、堆肥に含まれている肥料成分を含め、総合的な施用量を考える必要があります。
また、堆肥の種類によって、分解が早いか遅いかという違いがあることにも注意する必要があります。
堆肥は、育てる野菜や花がどれくらいの生育時期にどのような肥料成分を必要とするかということを考えた上で施すようにしましょう。
そうすれば、作物がスムーズに生育するだけでなく、肥料成分を必要な分だけ与えることができ、環境に優しい園芸が可能になります。
ここでは、肥料成分の吸収特性を作物別に、伸び上がり型、平常型、先行吸収型の3つの型に分けて説明します。
伸び上がり型
伸び上がり型は、初期にゆっくりと育てて、根や果実の肥大期から収穫期までに一気に肥料成分を必要とするものです。
ダイコン、ニンジン、スイカ、カボチャ、メロンなどがこれに当たります。
肥料成分の多い堆肥や元肥は控えめにし、あとで追肥で補っていくようにします。
平常型
平常型は、生育する全期間にわたって肥料成分を必要とするものです。
トマト、キュウリ、ナス、ネギなど生育期間の長いものがこれに当たります。
多くの草花もこれに分類されますが、キレイな花を咲かせるために、リン酸を多く必要とします。
逆にチッ素がいつまでも多いとキレイな花を咲かせられません。
先行吸収型
先行吸収型は、生育初期から養分を与え、生長させなければならないものです。
ホウレンソウ、コカブ、サツマイモ、ジャガイモ、レタスなど生育期間の短い野菜がこれに当てはまります。
土づくりの時に、堆肥や元肥で十分な肥料成分を供給しておきます。
堆肥のやり方の違い【土壌の性質別】
粘土質の土を改良する場合
土の塊を指先でこすり合わせた時、ツルツルしているようなら粘土質の土壌です。
粘土質の土壌は、水もちと保肥性は良いのですが、水はけと通気性が悪いのが欠点です。
乾くと地表面がカチカチに固くなったり、表面にひびが入ったりして、耕すのも大変なことがあります。
これを改良するために堆肥を施します。
毎年土づくりの時に、1㎡あたり2〜3kgの腐葉土やバーク堆肥などの植物堆肥を施していきます。
そうすることで、土はフカフカの状態となり、粘土質土壌は徐々に改善されていきます。
もし、堆肥を使っただけでは効果が現れないようなら、堆肥に加えて、川砂やパーライトのような多孔質の土壌改良材を使う方法もあります。
施用量の目安は、1㎡あたり5kgほどです。
施すとすき間ができて、水はけや通気性がさらによくなります。
乾燥に弱く、水もちの良い土を好むサトイモは、粘土質土壌で育てると、ねっとりとした食感になります。そのほかにエダマメも、比較的粘土質土壌を好み、生育がよくなります。
砂質の土壌を改善する場合
土の塊を指先でこすり合わせたとき、ザラザラしているようなら砂質の土壌です。
砂質の土壌は、一部を除いて、野菜づくりには適さない土壌です。
砂質の土壌は水はけや通気性は良いのですが、水もちも保肥力もよくありません。
そのため、水分や養分が流れ出しやすいだけでなく、通常の土と同じ感覚で肥料や肥料成分の多い堆肥を施すと作物が肥やけを起こします。
この砂質の土壌を改善するには、「堆肥と粘土質の土で改良する方法」と「改良用土で代替する」の2つの方法が主にあります。
砂質と反対の性質を持つ粘土質の土を入れて改良できます。
ただし、粘土質の土だけ入れると、粘土質の中に細かい砂が入り込み、カチカチに固まってしまいかねません。
そこで、土づくりの最初の段階で、腐葉土など植物質の堆肥を大量に施し、同時に赤土や黒土などの粘土質の多い土を入れます。
施用量の目安は、1㎡あたり堆肥4kg、粘土質の土2kgです。
畑や花壇全面に散布して、土とよく混ぜ合わせます。
また、先ほど述べたとおり、粘土質の土の代わりにバーミキュライトやゼオライトなどの改良用土材を使う方法もあります。
施用量の目安は、1㎡あたり1〜2ℓです。コストはかかりますが、効果があります。
砂質の程度にもよりますが、スイカ、カボチャ、サツマイモ、ラッカセイなどは、砂質土壌を好みます。トマト栽培では、糖度を増すために砂質土壌で、あえて吸収制限をして栽培することがあります。
おわりに
ちなみに、家畜ふんの肥料効果の中でも違いがあります。
鶏ふんは速効性で、牛ふんは遅効性です。
したがってこの2つを組み合わせれば、先ほどまとめた作物の3つの吸収特性「伸び上がり型」「平常型」「先行吸収型」に合わせて堆肥を使うことができます。
例えば、伸び上がり型は牛ふん主体、平常型は鶏ふん、牛ふんの組み合わせ、先行吸収型は鶏ふん主体、というように、作物ごとの肥料成分の成分の吸収特性に合わせて肥料を使い分けていくと良いでしょう。
下記に堆肥の種類とその特徴についてまとめていますので、気になる方は参考にしてください。